障害者スポーツボランティアとは

2022.3.31公開
ボランティアの輪を広げ、地域の障害者スポーツの発展につなげたい
栗原 寿江さん
NPO法人障がい者スポーツクラブHIMAWARI 代表
上級パラスポーツ指導員

 ボランティアを募集している、またはこれから募集する団体の方に向けて、ボランティアの方々にご協力いただいて事業を運営している団体の活動内容やボランティアを受け入れる際のポイントなどをお伝えします。

 今回お話をうかがったのは、東京都青梅市を拠点に活動するNPO法人「障がい者スポーツクラブ HIMAWARI」の代表を務める栗原寿江(くりはら としえ)さん。障害のある方もない方も、一緒にスポーツ活動を行う当クラブの創立者でもある栗原さんに、お話を伺いました。

障がい者スポーツクラブ HIMAWARI(以下「HIMAWARI」)では、普段ボランティアの方にどのようなサポートをお願いしているのですか?

 準備や片付けのほかに、メンバーと一緒に練習していただいたり、試合の際には審判を務めていただいたりすることがあります。新しくボランティアとして関わってくださる方との出会いを通じて私たち自身も知識を深められますし、活動の幅を広げることにつながるのではないかと期待しています。

一般の方がボランティアに参加される際に気を付けていることはありますか?

 いろいろとありますが、特に気を付けているのは障害のある方と初めて接する方がボランティア活動に参加される時ですね。というのも、その方が持っている障害のある方に対するイメージと活動に参加している障害のある方とのギャップに戸惑うことが予想されるからです。活動の前に私たちから戸惑いそうなポイントをお伝えするようにしています。

ちなみに、どんなことで戸惑われるのでしょう?

 例えば、知的障害のある方だと、興味がある話題は真剣に聞いてくれますが、興味がないとそっけない態度を取ることがあります。また、プレーに対して周りの人が「スゴイよ~」と声を掛けても、自分の中で普通だと思ったら全然喜ばないこともありますね。想定外の態度を示すことがあるので、初めてその場面に遭遇する方は面喰ってしまうかもしれません。ただ、知的障害のある方全員がそうとは限りませんし、実際に接してみないとわからないことも多くあります。障害者スポーツでのボランティア経験が少なく不安を感じている方が活動を希望されたら、事前に参加者の障害の特性や対応方法などをお伝えし、まずは体験していただくという方針が良いと考えています。

障害のある方への接し方を教えること以外に、ボランティアの方に対してフォローしていること、もしくはしていこうと思っていることはありますか?

 初めての方でもすぐに打ち解けられるような環境作りには力を入れています。HIMAWARIはフレンドリーなメンバーが多いので、自分から声を掛けるのが苦手な方でも輪に入りやすい雰囲気になっていると思います。また、スポーツに苦手意識を持っている方が来られた場合は、事前に競技に参加したいかどうか希望を聞くようにしています。自分自身が競技に参加することは気が引けるという場合は、まずは競技を見てもらうようにしています。メンバーへの指導や一緒にスポーツを楽しむことに加えて、一歩離れたところから競技全体を見守ることも大事な役割の一つですから。そもそも障害者スポーツは運動神経の良し悪しがあまり問われませんので、徐々に自分なりの関わり方や楽しみ方を見出していただけると良いなと思っています。

2021年7月にTOKYO 障スポ&サポートにご登録いただきましたが、今後どのように活用していきたいとお考えですか?

 まずは私たちHIMAWARIの存在と私たちがボランティアを募集していることを認知してもらい、これまで接点がなかったいろいろな方に来てらえるような流れを作りたいですね。もし、パラスポーツ指導員の資格をお持ちの方がいらっしゃったら、参加者に向けて提供できる競技種目を増やすことができるかもしれません。ボランティア活動の機会やそこに参加してくださる方の数が増えれば、組織自体が活性化していくと考えています。ぜひ、他のスポーツ団体の皆さんにもTOKYO 障スポ&サポートのようにWebを使ったボランティアの募集方法があることを知っていただきたいです。

ボランティア活動による組織の活性化ですか。良い取組ですね。

 ちなみに、都心部ほど多くはありませんが、西多摩地区にも複数の障害者スポーツに取り組む団体があるんです。私は西多摩地区にお住まいの障害のある方が、わざわざ都心部まで出向かなくても近所でやりたいスポーツ活動を見つけられるようになるのが理想だと思っています。その理想に近づくために、私たちが窓口になって西多摩地区に障害者スポーツボランティアの輪を広げて、障害者スポーツの活動を活性化していけたらいいなと考えています。

最後に、ボランティアと一緒に活動したいと考えている、障害者スポーツに取り組む団体の方にメッセージをお願いします。

 東京および北京でのオリンピック・パラリンピックが終わり、障害者スポーツに対して、世間の関心が高まっている今こそが、ボランティアとして仲間に加わっていただく絶好のタイミングではないでしょうか。ボランティアへの意欲はあっても、場所や日時などの条件が合わなくて参加を見送っている方も多いと思います。私たちがそういう方たちの思いを叶える機会をどんどん作って、障害者スポーツを活性化させていきましょう。

〈インタビューを終えて〉

 シドニーパラリンピックが開催される前の1998年にHIMAWARIを立ち上げ、健常者だけのメンバー構成から、障害の有無に関わらず、一緒にスポーツ活動を行えるクラブへと育て上げてきた栗原さん。ボランティアの方に活動の手助けをしてもらうだけでなく、団体を運営している栗原さん自身もボランティアから新しい考えや知識を取り入れてHIMAWARIをさらに発展させたいという前向きな気持ちが伝わってきました。また、HIMAWARIのある西多摩地域全体の障害者スポーツ活動を自分たちが率先して盛り上げていきたいとも。栗原さんの朗らかな笑顔の向こうにけん引役としての固い決意があることを、ひしひしと感じました。