障害者スポーツボランティアとは

2023.3.24公開
ボランティアの皆さんの支えで、障害のある人たちの心の光である大会を開催できました
精神障害者地域生活支援とうきょう会議
渡辺真也(わたなべ しんや)さんと南谷哲也(みなみたに てつや)さん

 「ボランティアを募集している」または「これから募集する」団体の方に向けて、ボランティアのご協力を得て事業を運営している団体の活動内容やボランティアを受け入れる際のポイントなどをお伝えします。

 今回お話をうかがったのは、東京都を拠点とする「精神障害者地域生活支援とうきょう会議」において、サポート活動を行っている渡辺真也(わたなべ しんや)さんと南谷哲也(みなみたに てつや)さん。同団体のスポーツ企画部会の実行委員として様々なスポーツ大会を企画・運営されているお二人に、ボランティアの方々とのコミュニケーション方法や、コロナ禍で変化したことなどをお聞きしました。

「とうきょう会議」のスポーツ企画部会では、具体的にどのような活動をされているのでしょうか?

渡辺さん バレーボール、フットサル、卓球など、障害のある人を対象としたスポーツ大会の企画・運営・サポートを行っています。現役のスポーツ選手など普段会うことがない人との交流を通じ、障害のある人たちにスポーツの楽しさを感じていただくのが第一の目的です。最終的には、障害のある人に“自分もやればできる”という自信を持っていただきたいと思っています。

ボランティアの方々にはどのようなサポートをお願いしているのでしょうか?

南谷さん 令和4年11月に開催した「令和 4 年度東京都精神障害者スポーツ交流祭 第 37 回バレーボール大会」を例に挙げると、ボランティアの皆さんには会場の設営・片づけに加え、得点係といった試合の進行役もお願いしました。サポートというよりも「核」としてイベントを支えていただいたという印象です。

ボランティアの方々に重要な役割をお願いし、かつイベントをスムーズに進行させるためのポイントはありますか?

南谷さん ボランティアの皆さんには、事前にどのような作業を担当していただくのかを明確にお伝えしました。具体的には、事前に試合のルールや役割分担、イベント会場での細かい動きを書いた冊子を個別に郵送させていただき、イベント当日に現場で再確認するという流れでした。もし、障害のある試合参加者やボランティア同士のコミュニケーションで困ったことが生じれば、私たち運営側がフォローできるような体制も整えていましたが、ほとんど出番はなかったです。

初めてボランティアに参加される方もすんなりと現場に馴染めたのでしょうか?

南谷さん そうですね。問題なく馴染んでいらっしゃいました。東京2020パラリンピック競技大会をはじめ、様々な大会でボランティアを経験された方も数人いらっしゃって、その方たちが率先して馴染みやすいムードを作ってくださいました。

募集団体として、活動しやすい環境づくりのために行ったことはありますか?

渡辺さん 私たち運営側からの働きかけとしては、ボランティアの皆さんにはそれぞれ名札をつけていただき、冒頭に私たちから各人を紹介させていただきました。お互いのことを事前にある程度知っていれば、休憩時間などでの会話が弾みやすくなりますから。コロナ禍に入ってからは試合参加者とボランティア、またボランティア同士の会話を自粛するムードがありますが、私たちとしては向かい合うのではなく同じ方向を向いて話していただくなど、少し工夫してコミュニケーションを取っていただくようにお願いしています。

コロナ禍になってボランティアの募集の仕方も変わりましたか?

渡辺さん 緊急事態宣言が何度も出された令和3年はすべてのイベントを中止にしましたが、令和4年度は感染対策を徹底したうえで開催しています。それもあって、試合の参加者やボランティアの人数を制限するようになりました。コロナ禍以前のイベントでは企業単位で、つまり集団でボランティアに参加いただくパターンが多かったのですが、それがままならなくなり、個人のボランティアを募集することになったのも、大きな変化だと思います。

令和4年11月のバレーボール大会では、TOKYO障スポ&サポートを通して個人参加でのボランティアを募集されましたが、いかがでした?

南谷さん 集団でのボランティア参加が難しくなったこの時代に、ボランティアに対して意欲のある個人とつながる仕組みがあるのは本当にありがたいと感じました。実際、30人ほどの定員に対し50人くらいの方に応募いただき、意欲のある方がこんなにいらっしゃることに感激しました。今回は泣く泣く人数を絞らせていただきましたが、今後も機会があれば活用したいです。

個人参加のボランティアの方が増えたことで良かったことはありますか?

南谷さん いろいろと行動に制限のあるこの時期に、多くの個人ボランティアの皆さんにご参加いただいてスポーツ大会を開催できたのがなによりも良かったと思います。大げさに聞こえるかもしれませんが、人によっては大会のあるなしが人生を大きく左右します。特にスポーツに真摯に取り組んでいる人にとっては、大会という具体的な目標があるかないかで練習のモチベーションが変わってくるでしょう。TOKYO障スポ&サポートのような仕組みを利用して個人ボランティアの皆さんに多くご応募いただき、それが成功に終わったのは私たちスポーツ企画部会にとって大きな収穫だったと思います。コロナ禍という困難な状況下でも、障害のある人たちの心から光を消さずにすむ方法があることが分かりました。

〈インタビューを終えて〉

 渡辺さんは「特定非営利活動法人ハートフィールド たなし工房」南谷さんは「社会福祉法人ひらいルミナル アクティビティサポートセンターゆい」と、普段から障害者支援施設の支援員として活動されているお二人だけに、ボランティアの運営方法を中心にお話しいただく中でも障害のある人への心遣いが端々に感じられたのが印象的でした。「障害のある人たちに『自分もやればできる』という自信を持っていただくというのが、当団体がスポーツ大会を企画・運営する目的です」(渡辺さん)、「個人ボランティアの皆さんの支えで、障害のある人たちの心の光である大会を開催できました」(南谷さん)と、スポーツ大会を開催する意義や実現させるためのヒントを示していただいたインタビューになりました。