障害者スポーツボランティアとは

2023.03.30公開
ボランティアも一緒にイベントを創り上げていく。柔軟な発想がイベントの成功につながると思います
鈴木 孝志さん
東京都青梅市
鈴木孝志さん

 「ボランティアを募集している」または「これから募集する」団体の方に向けて、ボランティアのご協力を得て事業を運営している団体の活動内容やボランティアを受け入れる際のポイントなどをお伝えします。

 今回お話をうかがったのは、東京都青梅市役所に勤務する鈴木孝志(すずき たかし)さん。スポーツ推進課でスポーツイベントの企画・運営に携わっている鈴木さんに、障害者スポーツに関する新たな取り組みや、ボランティアを募集したことによる変化などをお聞きしました。

青梅市における障害者スポーツへの取り組みについて教えてください。

 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会のレガシー事業として、コロナ禍の社会状況を踏まえながら、2022年度から障害の有無に関わらず誰もがスポーツに親しむことができる環境づくりに取り組み始めました。具体的には4~6月にボッチャの練習会と練習の成果を披露する交流会を実施し、10月10日には「スポーツDAY青梅2022」というスポーツイベントを開催しました。こちらは、2019年度まで毎年開催されていた「スポーツ・レクリエーションフェスティバル」をリニューアルしたもので、「ゆるスポーツ」などを新たな競技種目として取り入れました。

「ゆるスポーツ」を取り入れたことで、障害のある人も参加しやすくなったのでしょうか?

 目隠しして点字ブロックの上を進むリレーをはじめ、「ゆるスポーツ」は運動が得意な人も苦手な人も関係なく、誰もが気軽に身体を動かす楽しみを感じることができます。私たちスポーツ推進課としては、一人でも多くの障害のある人にスポーツに親しんで欲しいという狙いがありましたので、ボランティアに関しても、障害のある人が参加することを前提にTOKYO障スポ&サポートで募集させていただきました。

これまでに募集サイトでボランティアを募ったことはありましたか?

 今回、初めて利用しました。TOKYO障スポ&サポートは「スポーツDAY青梅2022」と2023年2月19日開催の「第55回記念青梅マラソン大会」でボランティア募集のために活用いたしましたが、どちらも大きな反響があって驚きました。「スポーツDAY青梅2022」では青梅市の広報紙やHPで募集を告知したり、近隣の日本語学校の生徒の皆さんに参加いただいたりもしましたが、TOKYO障スポ&サポートを通じて参加した方の割合が大きかったですね。

「スポーツDAY青梅2022」では、ボランティアの皆さんにどのような活動をお願いしたのですか?

 「ゆるスポーツ」のブースを中心に会場の準備や受付をお願いしたほか、参加者と一緒になって競技を楽しんでもらいました。特に、TOKYO障スポ&サポート経由の参加者は経験豊富な方が多く、自発的に動いて場を盛り上げてくださったのでとても心強かったです。

ボランティア参加者に対して事前に告知したことはありますか?

 「スポーツDAY青梅2022」ではイベントの主旨や概要、皆さんにやっていただく活動の内容、当日の大まかな流れなどを事前にメールなどでお伝えし、詳細は当日のイベント開始前に説明させていただきました。TOKYO障スポ&サポートで募集したボランティアの方を受け入れるのは初めてだったのですが、事前に内容を伝えておいたことで、予想以上にスムーズでした。

「青梅マラソン大会」のほうは規模が大きい分、ボランティアの人数も増やしたのでしょうか?

 定員50人に対して80人くらいの応募があり、結果として応募者全員に参加いただきました。本大会は一般的なマラソンイベントですので、純粋な障害者スポーツとは言い難いのですが、“走ること”を障害の有無に関わらず楽しむイベントであるという観点から、TOKYO障スポ&サポートを活用いたしました。ボランティアの皆さんには主に給水ブースのお手伝いをお願いしたのですが、イベントの規模が大きかったため、当日に私自身がボランティアの皆さんとコミュニケーションをとることができませんでした。

ボランティアの方が加わったことで、いい影響はありましたか?

 「スポーツDAY青梅2022」で顕著だったのですが、TOKYO障スポ&サポートで募集したボランティアの皆さんが参加者と同じ目線で活動してくださっているのが素晴らしかったです。私たち市職員だと、どうしても参加者に対して事務的に接しがちなのですが、ボランティアの皆さんは主催者と参加者という壁を取り払って誰でも楽しめる雰囲気を作ってくださいました。実際、参加者へのアンケートでは満足度がとても高いものとなりました。今回のイベント成功の一因は、ボランティアの皆さんのご協力であることは間違いないと思います。

ボランティアの募集を検討している団体の方々にメッセージをお願いします。

 ボランティアは経験豊富な方も多いので実戦力として頼りになりますし、障害のある人への接し方など勉強になることが多いので、主催者の知見を広げるという意味でもありがたい存在です。ちなみに、TOKYO障スポ&サポートは障害者スポーツを対象としていますが、私たちのように既存のスポーツイベントへ部分的に障害者スポーツの要素を取り入れる形で活用してみても良いかと思います。参加対象が増える分、イベント自体もより魅力的になるのではないでしょうか。実際、「スポーツDAY青梅2022」ではリニューアル前と比べて来場者数が大幅に増えました。

部分的とはいえ障害者スポーツの要素を取り入れるのは大変ではないですか?

 そうでもないと思います。「ゆるスポーツ」に関しては「一般社団法人世界ゆるスポーツ協会」に協力いただけたので、こちらで一からルールを考えたり新たに機材を購入したりする必要はありませんでした。もし障害のある人のサポートに難しさを感じているのなら、想像だけでハードルを上げていないでしょうか?実際にやってみるとそこまで特別なサポート体制は必要なさそうでしたし、私たち主催者の気付きにくい部分は経験豊富なボランティアの皆さんが補ってくださいました。これからボランティアの活用を考えている皆さんにはぜひ柔軟な発想でイベントを企画し、前向きな姿勢で募集をかけていただきたいと思います。

【インタビューを終えて】

 ボランティアの活用でイベントが「上手くいった」と満面の笑みで語ってくれた鈴木さんでしたが、「ボランティアの方々と事前のコミュニケーションがもっと綿密に取れたら、イベントがもっと円滑に進められたのではないか」と満足しきってはいない様子で、スポーツ事業をもっと向上させたいという熱意が伝わってきました。なお、鈴木さんの所属するスポーツ推進課は、2023年4月の組織改正により「生涯学習部」という新設部門に入り、生涯学習という大きな視点のもと、障害の有無に関わらずスポーツに親しみ、互いに学びあうことができる機会をさらに増やしていくとのことでした。これに伴い、ボランティアの皆さんの活躍の場が増えていくことは間違いないでしょう。