障害者スポーツボランティアとは

2024.03.27公開
ボランティアとのつながりが、アンプティサッカー普及のきっかけになる
日本アンプティサッカー協会
川治寛正さん

 「ボランティアを募集している」または「これから募集したい」団体の方に向けて、ボランティアのご協力を得て事業を運営している団体の活動内容やボランティアを受け入れる際のポイントなどをお伝えします。

 今回お話を伺った団体は、「主に上肢または下肢の切断障がいを持った人々により行われるサッカー」(※1)であるアンプティサッカーの普及に努める「日本アンプティサッカー協会」です。同協会の川治寛正(かわじ ひろまさ)さんに、ボランティアの募集を行った理由や、TOKYO 障スポ&サポートを活用した際の感想などをお聞きしました。

※1:日本アンプティサッカー協会公式ホームページより引用。

日本アンプティサッカー協会では、ボランティアの皆さんにどのような活動をお願いしているのですか?

 主に会場運営のお手伝いになります。サッカーフィールドの線引きやテントの設営、ボール拾い、得点板の掲示、来場者の誘導など、状況に合わせて色々な活動をお願いしています。また、競技以外のイベントでは、アンプティサッカーを参加者と一緒に体験していただくこともあります。

ボランティアの募集にあたり、 TOKYO 障スポ&サポート(以下、「S&S」)を利用しようと思ったのはなぜでしょうか?

 S&Sの存在は、知人から教えてもらったのですが、こちらを活用すれば、ボランティアを募集できるだけでなく、より多くの人にアンプティサッカーを知ってもらうことができそうだと考えたのが理由です。それまでは特定の大学に声をかけ、そこの学生の皆さんにボランティアをお願いしていたのですが、お声がけの範囲は協会関係者にとどまり、なかなか当協会を広く知ってもらうには至りませんでした。そこで、昨年開催した「第12回日本アンプティサッカー選手権大会2023」では、広く一般からボランティアを募り、募集と同時に競技自体の認知度の向上も図れれば、と思っていました。

S&Sへの登録や、その後の募集告知はスムーズにできましたか?

 はい、思っていた以上にスムーズに行えました。S&Sのボランティアコーディネーターの方の説明が分かりやすく、登録も簡単にできました。また、一斉メールの出し方や、募集時のアンケートの作成などもフォローしていただいて、とても心強かったです。どの作業も簡単で、パソコンが得意でない人でも問題なく操作できると思います。募集を開始してから応募が来るまでのスピードにも驚きました。 S&Sに登録したのが大会の2週間ぐらい前で、募集開始をしたのが1週間前だったのに、5名の定員に対して9名の応募がありました。

ボランティアの皆さんはアンプティサッカーのご経験があったのでしょうか?

 おそらく皆さん初めて関わられたのではないでしょうか。障害者スポーツに触れたことはあってもアンプティサッカーを間近で見るのは初めてだったと思います。何人かにお話を伺ったら、想像以上の迫力だったようで「すごいですね」と驚いていました。

今後のボランティアを募集する展望を教えてください。

 これまで日本アンプティサッカー協会でボランティア募集をしたのは、秋に東京で開催される「日本選手権」と、春に大阪で開催される「レオピン杯」の年2回しかなく、ボランティアの方々とのつながりが希薄になってしまっていました。せっかくボランティア活動をとおして関係性ができたのに、つながりが継続できず、もったいないと感じています。今後は、小さな大会やイベントでもボランティア募集をして、つながりも大切に維持していこうと考えています。今までは、協会のスタッフや選手が「自分たちでやれることは自分たちで」というムードがあり、試合の準備や運営など、すべて自分たちで行ってきました。でも、今回の経験でボランティアの皆さんにお任せできることがあると分かり、可能な部分はお願いし、スタッフや選手は本来の持ち場に専念してもいいのかなと考えています。ボランティアの方々にとっては、アンプティサッカーというスポーツを知る良い機会になるでしょうから、双方にメリットがあると思います。

S&Sをとおして、ボランティア募集を考えている団体の方々にメッセージをお願いします。

 登録が難しそうとか、新しくボランティアに来た人たちをまとめるのが大変そうとか、二の足を踏む要因は色々あると思いますが、まずは使ってみることが大事だと思っています。私たちが経験した限りでは、登録も募集も思っていた以上に簡単でしたし、来ていただいたボランティアの皆さんも慣れている方が多く、現場で困ったことはありませんでした。また、広く募集することで競技自体のステップアップも図れると思います。

競技のステップアップとはどのようなことですか?

 私たちの場合で言うと、アンプティサッカーという比較的認知度があまり高くない競技を、より広く認知してもらうことですね。一般のボランティアの方が参加すれば、口コミなどが広がることで、世間の関心も高まっていくと考えています。また、アンプティサッカーをきっかけに他の競技にも興味を持つ人が増えれば、障害者スポーツ全体の普及にもつながっていくと思います。

発信力を高めるという意味でもボランティアを募集する意義があるのですね。

 そうですね。たとえば、競技会のチラシを作って配っても、なかなか認知向上にはつながらないのが現状です。一方、ボランティア募集というかたちで「手助けしてほしい」と発信すれば、確実に来てくださる人がいっぱいいます。私自身もボランティアを長くやっているので分かるのですが、他人の力になれるということは、行動を起こす大きなモチベーションになります。このように、ボランティア募集には様々なメリットがあると思いますので、ボランティア募集をしたことがない団体の皆さんも、前向きに検討してみてはいかがでしょうか。

【インタビューを終えて】

 日本アンプティサッカー協会がボランティアを募集する背景には「発信力を高める」という目的があることを知り、目からうろこが落ちる思いでした。インタビューに応じてくださった川治さんは、アンプティサッカーの魅力を「上肢や下肢に障害のある人が、スポーツを楽しむことができる」「健常者も見ているだけで生きる気力がわいてくる」と語ってくださいました。ボランティア募集をとおして競技自体の認知が広がれば、障害者スポーツに興味を持つ人の数が増え、さらに競技が活性化するという好循環が生まれるのではないでしょうか。