障害者スポーツボランティアとは

2024.03.25公開
ボランティアのお力でイベントが存続可能に
府中市総合型fスポーツクラブ
本村良子さん

 「ボランティアを募集している」または「これから募集したい」団体の方に向けて、ボランティアのご協力を得て事業を運営している団体の活動内容やボランティアを受け入れる際のポイントなどをお伝えします。

 今回お話を伺った団体は、障害の有無にかかわらず誰もがスポーツを楽しむことを目的とする「fスポーツクラブ スポーツ体験教室」を主催する府中市総合型fスポーツクラブです。同クラブの本村良子(もとむら よしこ)さんに、TOKYO 障スポ&サポートを活用してボランティアを募集した理由や、活用後の教室の様子などをお聞きしました。

府中市総合型fスポーツクラブでは、ボランティアの皆さんにどのような活動をお願いしているのですか?

 当クラブが月1回開催している「fスポーツクラブ スポーツ体験教室」で、スタッフや参加者と一緒になって用具や掲示物の準備・片付けを行っていただいたり、ボッチャや卓球バレーをはじめとする様々な種目をプレイしていただいたりしています。本イベントでは参加者と同じ目線で、自由に楽しんでいただくことを何よりも大事にしていますので、ボランティアの方に対して「声を出して会場を盛り上げてほしい」といったお願いをすることはありません。

2022年からTOKYO 障スポ&サポート(以下、「S&S」)でボランティアを募集されていますが、どのようなきっかけで登録に至ったのですか?

 少額ですが、この教室では参加者から参加費をいただいています。一方で、運営を手伝ってくれる方(ボランティア)も必要で、S&Sへの募集団体登録をする前は、参加費を無料にするという条件で参加者に教室運営のお手伝いをお願いしていました。その結果、運営費が減り、保険代や空調代を払うと赤字が出てしまい、教室の存続危機に陥ってしまったんです。そんなタイミングで知人が薦めてくれたのがS&Sでした。S&Sを活用することでボランティアが来てくれれば、教室に参加したい人に対しては運営のサポートを頼まずに済み、運営費を確保しつつ活動を継続できると思い、登録してみることにしました。

登録や活用にあたり難しいことや不便に感じたことはありますか?

 特になかったです。私はパソコン操作が苦手なので多少の抵抗感はありましたが、夫に協力してもらいながら、S&Sのボランティアコーディネーターの方にオンラインで登録の手順を丁寧に教えていただきました。オンラインだと画面共有しながら教えていただけるので、とても安心感があり、落ち着いて操作できました。音声や説明資料だけの案内だったらお手上げだったと思います。また、資料のポイントとなる部分にマーカーを引いていただき、分かりやすくまとめたものを共有してくださったので、操作を忘れた場合も自力で対応できています。どうしても分からない時は電話で直接お聞きすることもできるので、とてもありがたいです。

卓球バレーを楽しむ様子
これまで定期的にS&Sを活用されていますが、反響はいかがですか?

 パラスポーツ指導員の方やベテランボランティアの方もいれば、初心者の方もいるなど、本当に色々な方が応募してくださっています。本イベントでは交通費が出ないので、当初は会場の近くにお住いの方を中心にお願いしていたのですが、遠くからでも参加したいという声をいただいたので、今は居住地を考慮して選ぶことはなくなりました。

ボランティアの皆さんの現場での様子はいかがですか?

 イベントには障害のある人も多く参加していますが、ボランティアの皆さんは気負うことなく、自然に接していただいていて、教室に溶け込んでいる印象があります。教室終了後に感想を聞いてみると、「楽しかった」「未体験のスポーツを知ることができて良かった」といったコメントがほとんどですので、満足いただいていると思います。中には自分がどう動けばいいか、判断に迷われる方もいらっしゃるのですが、その時は私たちスタッフがお声がけして、場に溶け込めるように誘導します。ですから、率先して動くことが苦手という方でも問題なく楽しめると思います。

スタッフの皆さんにとって、ボランティアを募集するメリットはありますか?

 ボランティアの方が参加者の応対をしてくださることでスタッフに余裕が生まれ、安全管理により注力できるようになりました。怪我をした人はいないか、事故につながりそうな場面はないかなど、隅々にまで目を配れるようになりましたので本当にありがたいと思っています。私たちスタッフにとって、ボランティアの皆さんはまさに宝です。

ボランティアの方に対して望んでいることはありますか?

 とにかく楽しんでいただきたいと思っています。私たちの教室ではチームを振り分けたり種目ごとに制限時間を設けたりしていないので、参加者には興味がある種目を好きなだけプレイしていただいています。それこそ一種目をずっとやり続けても大丈夫です。本当に自由な雰囲気で運営していますので、参加者と一緒に、その魅力を存分に味わって笑顔になっていただくのが一番だと思っています。

ボッチャを楽しむ様子
ボランティアを募集する際に意識しているポイントはありますか?

 特に経験や資格の有無で区別することはないです。強いて言えば、「fスポーツクラブ スポーツ体験教室」でのボランティアが初めてという方を中心にお願いしていることでしょうか。一人でも多くの方に当クラブの自由な雰囲気に触れていただきたいと思っています。そうやってスポーツの裾野を広げていきたいですね。

S&Sでボランティアを募集してみたいという団体の皆さんに対して、伝えたいことはありますか?

 私のようにパソコン操作が苦手でS&Sへの登録をためらっている方もいらっしゃるかと思いますが、サポート体制がしっかりしていますのでぜひ検討してみてほしいと思います。私たちの教室には、障害のある人やそのご家族が笑顔になれる「居場所」を作るという目的があるのですが、それを実現し存続できているのはボランティアの方々のおかげです。教室が継続できているきっかけがS&Sへの登録だったという経緯がありますので、もし私たちのようにボランティアと一緒に活動していきたいと検討していたり、悩んでいたりすることがあれば、ボランティアコーディネーターに相談してみるのも一つの手ではないかと思います。

【インタビューを終えて】

 今回は「fスポーツクラブ スポーツ体験教室」の会場での取材となりましたが、障害のある人・ない人、参加者・ボランティアの区別なく全員が笑顔でスポーツを楽しんでおり、会場全体がとても活気に満ちていました。本村さんをはじめ府中市総合型fスポーツクラブの皆さんがボランティアの方々と協力してイベントを継続させていることで、「fスポーツクラブ スポーツ体験教室」が多くの人に笑顔と安らぎを与える「居場所」になっているのだと感じました。