障害者スポーツボランティアとは

2024.04.16公開
障害のある人への理解にもつながるボランティア活用。その社会的意義は大きいです
調布市生活文化スポーツ部スポーツ振興課
岡部瑞希さんと志村音羽さん

 「ボランティアを募集している」または「これから募集する」団体の方に向けて、ボランティアのご協力を得て事業を運営している団体の活動内容やボランティアを受け入れる際のポイントなどをお伝えします。

 今回お話を伺ったのは、調布市生活文化スポーツ部スポーツ振興課の岡部瑞希(おかべ みずき)さんと志村音羽(しむら おとわ)さんです。『第2回車いすバスケットボールChofuエキシビションマッチinむさプラ2023』(以下、『車いすバスケットボールエキシビションマッチ』)『THE ROAD RACE TOKYO TAMA 2023』『障害当事者の運動機会創出事業「からだをうごかすぞう」』『調布市障害者スポーツ体験会』という4つのイベントでTOKYO 障スポ&サポートを活用した同課のお二人に、使い勝手や活用するメリットなどをお聞きしました。

TOKYO 障スポ&サポート(以下、「S&S」)でボランティアを募集したきっかけを教えてください。

岡部さん 調布市では2023年度からボランティアを積極的に活用する気運が高まり、障害者スポーツに関わるイベントにおいてS&Sを利用しました。登録はかなり前に済ませていたのですが、利用自体は2023年の『車いすバスケットボールエキシビションマッチ』からになります。

S&Sを初めて利用した時の反響や、それまでのボランティア募集との違いはありましたか?

志村さん 『車いすバスケットボールエキシビションマッチ』の時は10人の定員に対して100人を超える応募があり、予想以上の反響に驚きました。それ以前の障害者スポーツに関するイベントではボランティアを募集していなかったので比較が難しいのですが、S&Sを利用することで多くの人に周知できたと思います。実際、調布市内だけでなく、市外や東京都外の方からも応募がありました。


岡部さん 一方で、『からだをうごかすぞう』は、オリジナルのミニゲームを行うイベントで具体的なイメージがつきにくかったのか、応募は比較的少なかったです。『車いすバスケットボール』のように多くの方が知っているスポーツは応募数が増えるように感じています。

S&S以外の方法でもボランティアを募集しましたか?

岡部さん 調布市スポーツボランティアというボランティアバンク制度を、市報やチラシ、調布市の公式HPなどで広報していますが、パラスポーツに関するイベントではS&Sが非常に効果的だったと思います。


志村さん SNSを使って広報したことで、幅広い年齢層に届いていた印象があります。

S&Sの使い勝手や、運用で困ったことはありますか?

岡部さん 最初は、募集ページに掲載すべき内容がわからず、S&Sのボランティアコーディネーターの方にアドバイスをいただきましたが、修正を何度もしたわけではなく、手間はかかりませんでした。最初は慣れない部分があるかもしれませんが、徐々に要領が分かってくるので、回を重ねるごとに楽になると思います。S&Sではメール機能を使って当落の結果や集合時間の変更、リマインドなどのメッセージを送れるのでとても便利ですね。


志村さん 私はPC操作が苦手なのでS&Sのボランティアコーディネーターの方に丁寧に教えていただきましたが、慣れてくると手間を感じなくなりました。ただ、初回利用時の反省点としては、『車いすバスケットボールエキシビションマッチ』のボランティア募集の際、反響が読めなくて募集の締切を開催の直前までとしてしまったことで、結果をお知らせするまでに時間が掛かり、多くの応募者にご不便をおかけしました。振り返ると反省すべき点が様々ありますが、その都度S&Sのボランティアコーディネーターの方に相談し、活用方法を改善していけば本当に心強いシステムになると思います。

ボランティアの皆さんは、現場ではどのようなご様子でしたか?

岡部さん 『からだをうごかすぞう』では障害のある人たちが多く参加されていたのですが、一人ひとりに合わせて上手にコミュニケーションをとっていらっしゃいました。経験豊富な方もいらっしゃったので、こちらが指示しなくても自発的かつ柔軟に動いてくださっていた印象があります。


志村さん ベテランの方が率先してアイデアを出し、イベントを回してくださっていました。参加者との接し方や指示の出し方など我々も勉強になることが多く、とてもありがたかったです。

イベント終了後には、ボランティアの皆さんからどんな感想がありましたか?

岡部さん 「参加して良かった」「楽しかった」というコメントが多かったので、満足していただけたと思います。また、S&Sで応募された方は、競技としてのパラスポーツに興味があるのはもちろん、障害のある人との交流も大切にされているのかなと感じました。


志村さん 皆さん、ボランティア活動に対する熱意があるだけに、「もっといろんなことをしたかった」という意見もありました。『車いすバスケットボールエキシビションマッチ』の時は、ボール拾いや参加者の会場への誘導などをお願いしましたが、「受付など他の作業もやってみたい」とおっしゃっていたので、そういった意見は今後活かしていきたいと思います。

行政という観点から、S&Sを活用して感じたメリットはなんですか?

岡部さん S&Sは無料で利用できるため、費用を掛けずにボランティアを集められるメリットがあると思います。実は、同じ調布市役所の別部署に対しても、S&Sへの登録を薦めました。同部署では、障害のある人向けに運営している運動の市民サークルの事業を引き継ぐことになったのですが、職員だけではカバーできない部分があるので、ボランティアの力を借りてはどうだろうかと提案しました。


志村さん S&Sは登録がすごく簡単ですし、ボランティアコーディネーターの方が丁寧にサポートしてくださるので、障害者スポーツに関わる活動でボランティアを募集するのに非常に便利なシステムだと思います。具体的なことが決まっていなくても、まずは相談することから始めてみてはいかがでしょう。きっと良いヒントが得られると思います。

行政の事業でS&Sを導入するにあたり何か問題はなかったですか?

岡部さん 費用が発生する試みの場合は、事前の調整に時間がかかることがありますね。たとえ少額でも、予算に組み込まれていない費用を捻出するのは難しく、実施が来期になることもあります。その点、S&Sは無料ですので、比較的スムーズに利用を始めることができました。そういう意味でも自治体にとって良いサービスですので、積極的に活用してほしいと思います。

ボランティア募集を検討している団体の皆さんにメッセージをお願いします。

岡部さん ボランティアがいなくても運営できるイベントはありますが、ボランティアを活用することは大いに意味があると思います。スポーツを「ささえる」担い手を増やすことはもちろん、パラスポーツイベントでの活動は、パラスポーツの普及や障害理解の促進にもつながるはずです。このことは、社会的にとても大きな意義があることではないでしょうか。


志村さん S&Sを活用すると、近隣だけでなく遠方にお住まいのボランティアの方も来ていただけるのがメリットだと思います。イベントを盛り上げたいという気持ちは皆さん一緒ですし、市内のボランティア募集に悩まれている自治体にとって、市外からの力は大変頼りになる存在です。また、募集や当落通知の発送において、自治体の負担も軽減できるので、積極的な活用をおすすめします。

【インタビューを終えて】

 お二人の話を伺っていると、ボランティア活用を通じて障害者スポーツの裾野を広げていきたいという意気込みをひしひしと感じました。また、ボランティアの方々に対して「頼りにしている」「学ばせてもらった」と語る様子からは、ボランティアと一緒になって、事業をより良いものにしているということが伝わってきました。実際にS&Sをどのように活用されているのかを具体的にお聞きできましたので、ボランティア活用を考えている団体の皆さんには、大いに参考になったのではないでしょうか。