障害者スポーツボランティアとは

2021.12.07公開
ボランティアは自分の世界を一気に広げてくれる。
やらないのはもったいない
神保秀久さん
上級障がい者スポーツ指導員
東京都障害者スポーツ指導者協議会副会長

 ボランティア活動にご興味のある方に向けて、先輩ボランティアの方々の活動への想いや実際の活動内容とともに、魅力をお伝えします。

 今回は、東京都障害者スポーツ指導者協議会・副会長および東京都障害者スポーツ指導員協議会荒川・会長としてさまざまな障害者スポーツイベントを企画・運営する傍ら、個人でのボランティア活動にも精力的に取り組まれている神保秀久(じんぼ ひでひさ)さんに、障害者スポーツを支援するにあたっての苦労や喜び、ボランティア活動の醍醐味などについて語っていただきました。

神保さんの障害者スポーツとの出会いを教えていだだけますか?

 20年以上前になりますが、参加したマラソン大会が「国際ブラインドマラソン大会」との共同開催で、そこで視覚障害のある方が走る姿を初めて目にしたんです。その方に方向や障害物の有無を伝える伴走者もすごく楽しそうにしていたのが印象的で、一人で走るより二人で走ったらもっと気持ちいいのではないかと思い、障害者スポーツに強い関心を持つようになりました。

その後、実際に障害者スポーツには参加されたのですか?

 障害のある方の伴走者として出場したいと別のマラソン大会の運営者に相談してみたら、その大会は障害のある方を受け入れた前例がないし、体制も整っていないということで認められませんでした。そこでいろいろ調べてみたら、実は過去に参加を申し込んだ障害のある方がいて、窓口でお断りされていたことが分かりました。そこから実行委員会に要望を出し続け、数年かかりましたが何とか実現にこぎつけました。今では視覚障害のある方だけでなく、身体に障害のある方や知的障害のある方も受け入れる、非常にオープンな大会になっています。

参加者というより支える立場で障害者スポーツに携わったわけですね。実際にやってみていかがでした?

 当初は障害に対する誤解が多く、いろいろな声が寄せられました。例えば、知的障害のある方は慣れない環境に身を置くと大声を出すことがあるのですが、周りには嫌がっている人を無理やり連れてきたように映ったらしく、その様子を見ていた方からご意見がありました。また、電動車椅子の方の参加もなかなか認めてもらえませんでした。電動車椅子は身体を動かさないからスポーツではないという理由だったのですが、当事者にしてみると電動車椅子を同じ姿勢を保って操作するのは至難の業なんです。アテトーゼといって自分の意志と関係なく動いてしまう身体を制御するのは大変な労力なのですが、傍目にはそう見えないんですね。そのような誤解がなくなったのが10年ほど前でした。

神保さんが携わっている障害者スポーツのイベントには、ボランティアの方も参加されていますか?

 はい。基本的にボランティアが中心になってイベントを運営しています。最初は手話講習会といった福祉関連イベントの参加者に声がけし、徐々に仲間を増やしていきました。あとは、障がい者スポーツ指導員の講習会でも声がけをしています。最近は東京オリンピック・パラリンピックの影響もあって、福祉関係者だけでなくスポーツ関係者の比率も増えてきました。

ボランティアに参加された方々はどんなご様子ですか?

 皆さんやりがいを感じていらっしゃるようです。たとえば、暗い表情だった障害のある方がレクレーションを楽しんでいる様子を見ると、「やって良かった」と心から思ってもらえているようです。その思いがボランティアを続けるモチベーションになり、さらに仲間を増やしていきたいという気持ちにもなるみたいですね。

神保さんご自身の心に残っているボランティア経験はありますか?

 電動車椅子でマラソン大会に出場された方が、大会に出たことで自信が持てるようになり、ご家族と離れて自活するようになったことが印象に残っていますね。その方は、スポーツを通して自分の世界が広がったと言っていました。その言葉は今でも私の大きなモチベーションになっています。

今後は「TOKYO 障スポ&サポート」を通して気持ちを共有できるボランティア仲間が増えると良いですね。

 そうですね。実は健常者向けスポーツの指導員の中にも障害者スポーツに携わってみたいという方は多いのですが、これまではうまくマッチングできなかったんです。というのも、私たちが作成した指導員名簿を行政に提出し、ボランティアが必要なイベントがあればその名簿を使って声がけしてほしいということをお願いしていたのですが、これがすごく労力がかかるのでうまく稼働していなかったんです。でも、今後は「TOKYO 障スポ&サポート」を通してスムーズにマッチングできることを期待しています。

福祉やスポーツと関係がなかった方も参加されるかもしれないですね。

 東京2020オリンピック・パラリンピックの影響もあって、層は広がっていくでしょうね。実は、私も両大会にボランティアとして参加したのですが、福祉・スポーツに関わりがなかった方も多く参加されていました。コロナ禍ということでスポーツ大会に参加すること自体が難しいと思う人も多かったと思いますが、パラリンピックが終わる頃には好意的な考えの人が増えた気がします。そのおかげで私たちも非常に活動しやすくなりましたので、この流れが一過性のブームで終わらないよう願っています。

東京2020オリンピック・パラリンピックの開催が決まったのは2013年でしたが、そこから障害者スポーツを取り巻く環境は変化しましたか?

 いろいろなところで障害者スポーツの体験会が開かれるようになりました。当初は健常者向けに障害者スポーツを紹介するという趣旨のイベントが多かったのですが、徐々に障害のあるなしに関わらず、一緒にスポーツを楽しむ体験会が増えていったように思います。やはり障害者スポーツを普及させるには、皆で一緒に楽しむことが重要ではないでしょうか。

これからボランティアを始められる方にその魅力を伝えるとしたらどんなことを言いたいですか?

 普段の人間関係は家族以外だと仕事もしくは趣味の仲間くらいだと思うのですが、ボランティアをやることで思いがけない人と繋がることができます。つまり、自分の世界が一気に広がるわけです。私も障害者マラソン関連の活動を通して、障害のある方の親族や商工会議所、地元商店街の方々と繋がり、そこからどんどん輪が広がっていきました。正直、ボランティアをやらないのは非常にもったいないと思っています。もし、参加しようかどうか迷われているなら、ぜひ参加してほしいですね。

継続できるかどうかわからない人でも参加して大丈夫でしょうか?

 ボランティアの良い点は、自分のやりたい時に、やりたいことができるところです。ですから、仕事で忙しいときや、精神的に辛い時期には無理して参加する必要はありません。少なくとも私自身はそういうスタンスですので、「絶対に来てほしい」という声がけはしていません。ですから「続けなきゃいけない」と自分でハードルを上げず、気軽に参加していただけると嬉しいです。

【取材を終えて】

 根っからのスポーツ好きで、学生時代はバスケットボールに熱中していたという神保さん。「スポーツ好きなら、相手に障害があってもなくても、一緒に楽しむことができるはずです」という力強いコメントをいただきました。そんな神保さんの理想は、「障害者スポーツ」という言葉がなくなること。つまり、障害のある方のスポーツ参加が当たり前になり、健常者と分ける必要がない世の中になってほしいとのことでした。これまで幾多の不可能を可能にしてきた神保さんが口にすると、本当に実現するのではないか、という予感がしました。