障害者スポーツボランティアとは

2022.03.08公開
視覚障害があってもいろいろな方と触れ合える。その喜びが原動力に
秋吉 桃果さん

ボランティア活動にご興味のある方に向けて、先輩ボランティアの方々の活動への想いや実際の活動内容とともに、魅力をお伝えします。

今回は、弱視の視覚障害がある大学生の秋吉桃果(あきよし ももか)さんに、ボランティア活動を始めたきっかけや、現場における周囲の人との関わり方などをお聞きしました。

秋吉さんがボランティア活動に参加するようになったきっかけを教えてください。

 高校時代、担任の先生がクラス全員にボランティア活動を勧めていたので、それならやってみようかなと思い立ったのがきっかけです。本当に気軽な気持ちで友人たちと一緒に参加してみたのですが、思っていた以上に楽しかったので、それからは年に数回参加するようになりました。主に学校から紹介された活動に参加していたのですが、高校生活の終わりくらいには自発的に活動先を探して応募することもありました。ここまでボランティアに対して積極的になれたのは、視覚障害があっても多くの方と関われたことが嬉しかったからだと思います。もちろん、友人と一緒という安心感もありました。

これまでで特に印象に残ったボランティア体験はありますか?

 特別支援学校で知的障害のある子供たちと一緒に宿題をしたり、遊んだりしたことが印象に残っています。教員志望なので、子供たちとの触れ合いはもちろんですが、先生方のお話も非常に勉強になりました。最近だと東京2020大会のフィールドキャストとしての活動も印象に残っていますね。パラリンピックに10日間参加させていただいたのですが、新国立競技場のサブトラックで、陸上競技の選手にタオルや飲み物を渡したり、お手洗いのご案内やゴミの回収、消毒作業といった業務に携わりました。

東京2020大会の体験は、これまでのボランティア活動とは違いましたか?

 外国の方が多いので言葉の壁を感じましたが、ジェスチャーで伝えたり、言葉が分かる人のところまでお連れしたりと、意外とその場の「ノリ」で何とかなりました(笑)。ただ、業務をスムーズに進めるためには、自分に視覚障害があることをボランティア仲間にも知ってもらう必要があったので、初対面の方にはきちんとお伝えするようにしていました。皆さん快く受け入れてくださって、私が困っていたらいろいろと助けてくれました。ちなみに、私は相手の方の顔が判別できないので、「今度お会いしてもお顔を認識できないと思います。良かったらそちらから声を掛けていただけますか?」と正直にお伝えしたら、集合時間や休憩時間に多くの方が声を掛けてくださいました。

ボランティア活動において、視覚障害があることで活動しづらいと感じたことはありましたか?

 障害のことを話せば助けてくださる方ばかりなので、業務で困った経験はあまりないのです。むしろ、逆に手助けの申し出をお断りする時に気をつけていました。例えば、移動する時にはぐれないよう「手を引きましょうか?」と言ってくださる方がいたのですが、私自身はかろうじて前を歩いている人の姿は認識できますし、このご時世だと感染対策も取らなければいけないので、まずはお礼を言って、丁重にお断りしてから「よければ後ろをついていって良いですか?」と聞き返すようにしていました。ただお断りするだけでは相手に「余計なことをしてしまった」という思いを抱かせてしまうかもしれませんから、できるだけ「力になれた」と感じていただけるよう、受け答えには気をつけています。また、そういった経験を積んでコミュニケーションスキルを高めていきたいとも思っています。

秋吉さんは昔から人と関わるのがお好きなのですか?

 どうなんでしょう? 高校の頃までは割とおとなしかった気もしますが(笑)。ボランティアを通じていろいろな方と出会ったり、こうやって取材をお受けしたりする中で人間好きな側面が培われていったのかもしれません。ただ、私が自分の障害についてオープンに話せるのは、中学時代の担任の先生のおかげだと思っています。先生は私が自分のことを人前で話せるようにいろいろ配慮をしてくださいましたし、相談にも乗ってくれました。高校に進学して合唱部の部長を務められたのも中学時代の経験があったからだと思います。

 私が人生の目標としているのは、視覚障害のある方と健常者の方とを繋ぎ、双方が助け合いながらそれぞれの能力を発揮できる社会を作っていくこと。そのためにもコミュニケーションスキルは大事だと思っています。

障害のある方の中には、周囲とのコミュニケーションが不安でボランティア参加をためらっている方も多いと思います。

 確かに周囲の反応はいろいろあると思いますが、ボランティアの方は障害に抵抗のない方が多い印象があり、私は拒絶される不安はありませんでした。たとえ、コミュニケーションがうまくいかなくて嫌な思いをしたとしても、期間限定なのでどこか気楽に捉えている部分はありますね。本当に嫌なら辞めていいですし、それを咎められることもありません。それもあって、私はボランティア活動について、失敗を恐れずにいろいろなことが試せる良い機会だと考えています。私自身、自分の障害を他人にうまく伝える方法を勉強する場として役立てている部分はありますね。あと、ボランティア活動には様々な年齢や職業の方が集まるので、社会勉強にもなっています。

不安要素だけでなくプラス要素にも目を向けると、見え方が違ってくるでしょうか。

 そうですね。もし、障害に対して間違ったイメージをお持ちの方がいたら、当事者である私たちがその考えを改めていけばいいだけの話ではないでしょうか。ありのままで接して仲良くなるのが一番の解決法だと思っています。最終的には、私たちを障害者とひとくくりに捉えるのではなく、それぞれに違う個性を持った人間なのだと感じていだきたいですね。私のように障害のある人間がボランティア活動に参加することで、周囲の方に障害への理解を深めてもらえるのが嬉しいですし、それがやりがいにもなっています。

〈インタビューを終えて〉

 終始笑顔でインタビューに応じてくださった秋吉さん。前向きでお話し好き、そして人間好きな性格がその表情や仕草からも伝わってきました。また、2022年4月からは晴れて教員として働くことが決まったそうで、着実に夢を叶えていくその姿に今後も期待せずにはいられません。機会があれば、生徒に対してもボランティアの良さを伝えていきたいとのこと。きっとその笑顔が、ボランティアの楽しさや素晴らしさの何よりの証明となるでしょう。